FNA出海
Ti5 ROBOTの生産ラインから見る、新市場参入で日系企業が押さえるべきPOINT

Ti5 ROBOTの生産ラインから見る、新市場参入で日系企業が押さえるべきPOINT

2026年9月11日人形ロボット工場見学Ti5 ROBOT関節モジュール日系企業

2026年9月9日、工場網信息科技(上海)有限公司(FNA)は、「上海鈦虎ロボット工場見学会」を上海鈦虎機器人科技有限公司(Ti5 ROBOT)にて開催しました。参加者は、ロボット実演のほか、テストや組立の各工程を見学し、技術担当者と意見交換を行いました。中国における人型ロボットの技術開発と産業応用がどの段階にあるのかを、生産ラインの実態から確認する機会となりました。

生産ラインから見る産業利用の現在地

Ti5 ROBOTは現在、関節・モジュールと人型ロボット完成機を主力事業としています。関節・モジュールでは、PRO-Sシリーズのハーモニック関節モジュールをはじめ、新世代のハーモニック関節モジュール、遊星型関節モジュールなどを展開。量産段階に入ったPRO-Sシリーズは、薄型ハーモニック減速機、ブラシレス・トルクモーター、高精度マルチターン絶対値エンコーダーなどを一体化し、軽量化とトルク密度の向上を重視した設計となっています。参加者は、関節モジュールなどの主要部品の組立工程から、検査・テストに至るまで、一連の生産プロセスを確認しました。

人型ロボット完成機では、身長を基準に分類し、用途に応じて複数モデルを展開しています。フラッグシップモデル「T140」は、身長140cm、重量38kg、42自由度を備え、高い動的歩行性能と複雑な作業への対応を想定しています。今回紹介された搬送ロボットは、片腕あたり15~30kgの搬送能力を持ち、製造ラインにおける部材搬送や工程間の供給、投入作業などへの活用が見込まれています。

搬送から精密作業へ、広がる実用化の可能性

技術交流では、Ti5 ROBOT人型ロボット事業部部長の盧偉文氏が、現在の産業用途と今後の技術課題について説明しました。現時点で主な用途となっているのは、搬送、部材の供給・投入、巡回点検などです。一方、精密溶接、ねじ締め、組立など、高い位置決め精度や動作制御が求められる工程については、なお技術開発の余地があるとされています。こうした用途については、技術の成熟に伴い、2027年前後から導入が進む可能性があるとの見方が示されました。

また、工場が人型ロボットを導入する際には、投資回収期間が重要な判断材料となります。盧氏は、投資回収期間を1.5~2年程度に抑えられることが、製造ラインへの普及を進めるうえでの一つの条件になるとの考えを示しました。海外生産拠点を拡大するメーカーにとっては、人件費を含む生産コストの上昇がロボット導入を後押しする可能性もあります。

FNAが注目する今後のポイント
  • 2027年前後:精密溶接、ねじ締め、組立などへの導入拡大が注目される時期
  • 投資回収期間1.5~2年:人型ロボット導入の判断における重要な目安
  • 海外生産拠点:人件費などのコスト要因が導入を促進する可能性

FNA調査部では、『2026年版中国産業用ロボット市場調査総覧』を発行しています。中国ロボット産業のサプライチェーン需給、主要部品市場、安全規制、グローバル戦略、日系メーカーにとっての事業機会などを幅広く分析しています。ダイジェスト版は無料でお申し込みいただけます。https://jsj.top/f/a7IXoP

上海鈦虎機器人科技有限公司 人型ロボット事業部部長 盧偉文

完成機から主要部品へ、日系メーカーの参入機会

中国ロボット市場動向についての説明では、FNAプロダクト事業部部長の金真廷氏が、製品市場の拡大とサプライチェーンの変化という2つの観点から、人型ロボット産業の現在地を解説しました。特に日系メーカーにとって注目されるのが、精密ボールねじ、ハーモニック減速機、フレームレス・トルクモーター、コアレスモーターなどの主要部品です。これらの部品では、高い精度や剛性、トルク密度、応答性などが求められます。精密加工、モーター、機械要素部品などで技術や生産ノウハウを蓄積してきた日系メーカーにとって、新たなサプライチェーン参入の可能性を検討できる領域と言えます。

人型ロボットのサプライチェーンに参入するには、技術仕様を満たすだけでは十分ではありません。完成機メーカーが実際に求める製品仕様や品質基準、サプライダー選定の条件、評価・検証プロセスに加え、コストや量産時の供給能力まで理解する必要があります。自社の技術や製品がどの工程で必要とされ、どのメーカーとの協業が可能かを見極めることが重要となります。

工場網信息科技(上海)有限公司 プロダクト事業部部長 金真廷

「産業の変化を見る」から「具体的な商機を見つける」へ

閉会にあたり、FNA総経理の俞婕氏が総括を行いました。俞氏は、中国の人型ロボット市場が量産化に向けた転換点を迎えているとの認識を示すとともに、今回訪問したTi5 ROBOTは国家級ハイテク企業で、「専精特新」企業として、製造業向け人型ロボットの量産・実用化に取り組んでいると紹介しました。参加者が生産ラインを自ら確認し、経営層や工場長との交流を深めることで、自社の生産改善や新規事業につながる具体策を見つけることに期待を示しました。

工場網信息科技(上海)有限公司 総経理 俞婕

FNAは2003年の設立以来、日中製造業をつなぐプラットフォームとして、中国市場で事業を展開する日系企業の現地ビジネスを支援してきました。近年は、ロボット、半導体、新エネルギー車などの先端製造分野を中心に、大手企業の生産現場へ訪問する工場見学会や企業交流を実施しています。技術の導入状況や生産現場の課題、市場動向を直接把握するとともに、業界専門家や関連企業との情報交換を通じて、事業展開に必要な情報を提供しています。

また、市場調査、ニーズヒアリング、候補企業の選定、商談支援などを通じて、企業の技術・製品と新たな産業ニーズとの適合性を見極め、具体的な協業につなげています。産業動向の把握から場性の見極め、価値の明確化、ターゲットの特定、協業の実現まで、各段階に応じた支援を行っています。今後は、先端製造分野における技術革新やサプライチェーンの変化、市場ニーズの動向を継続的に捉え、日系企業の中国市場における新たな事業機会の創出を支援していきます。

今後の工場見学会・会員向けイベントについて

ロボットやスマート製造に関する工場見学会・交流イベントへの参加をご希望の方は、企業名、役職、関心分野を明記のうえ、FNAまでお問い合わせください。ご関心の分野に応じて、関連するイベント情報をご案内します。